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西陣織について
金糸/平箔の技術
■ 西陣織を支える技 都人が魅せられる金糸・平箔の輝き

「京の着倒れ大阪の食い倒れ」と言うように、都人は着物のためなら金に厭目をつけない。それでいてお金がかかっていることを表に出さないのは、京都ならではの奥ゆかしさだ。西陣織の特色のひとつである豪奢さ(見えないところにまでお金をかけて大変豪華で派手な様子)は、着物を愛してやまない都人が考案したと言っても過言ではなかろう。今回は、そんな西陣織に欠かすことのできない金糸・平箔の製造販売を行う中嶋由商店を訪れた。


● 1万分の1ミリの金箔を張る手業に感嘆
金糸平箔の工房を訪れると聞いて、純金を糸状に伸ばしているか、絹糸を金色に染めている作業を想像した。ところが主人の中嶋由雄さんは、トレーシングペーパーほどの薄い紙を広げはじめたではないか。
「これは中国地方原産の落葉低木の三椏(みつまた)を原料にしている和紙で、お札にも使われています。表面には目止めのために樹脂加工や柿渋加工を施しています。」
そう言うと中嶋さんは、樹脂ベラを使って和紙の表面に漆を塗りあげた。そして布や金箔を挟んでいる合紙
で余分な漆を拭きとっていく。待つこと数十分、漆の乾き具合を確かめると、木箱の中から紙の束を大事そうに取り出した。そろりと紙をめくると、そこには黄金に輝く金箔が。竹製のピンセットで一枚ずつ丁寧に金箔を取ると、漆を塗った和紙に張りはじめた。金箔の接着剤として、漆が塗られていたのだ。約11センチ四方の金箔を、手際よくリズミカルに張っていく。一見誰にでもできそうな感じだが、1万分の1ミリという極薄の金箔は簡単にしわになるので、張るだけでも大変な技を要する。しかも一度張ってしまった金箔を剥がすことはできないので、一発勝負の連続だ。この技を習得するには、早くても10年はかかるらしい。

七夕の歌「♪きん〜ぎん〜すなご〜」の砂子がこれ。金箔の細かなもので、夜空いっぱいの星に例えられた。

漆の湿度が高いほうが乾燥しやすい特性を発揮するため、地下の室で寝かせる。
● 裁断された平箔が帯・金襴・金糸になる
金箔が重なり合ったところを上質の綿で拭き、表面を平らにすると、先程まで地味だった三椏の和紙は、眩いほどの輝きを放つ黄金の紙に生まれ変わった。「これを平箔と言います。漆は湿度を吸って乾燥する特性があるので、湿度の高い室の中で一昼夜、ないし二昼夜寝かせます。そして最後に、できあがった平箔を切るんです」裁断作業では、3センチ幅につき60〜100本に切っていく。1本の幅は0.3ミリと、シャープペンシルの芯よりも細い。明治25年にタバコの葉を刻む裁断機をヒントにして、手動裁断機ができたが、それまでは定規をあてて包丁で切っていたというから、想像を絶する。裁断した平箔は、帯や金襴の素材として使われる。また芯糸に撚りをかけて巻き付けていくと、金糸が誕生するのだ。
● 希少価値の高い純金箔の技
金箔を張る技術は、さまざまなものに利用されている。761年に法隆寺の観世音菩薩を皮切りに、全国の寺院で仏像や仏具に金箔を施すようになった。中嶋さんは、どんな凹凸があるものにでも金箔を張ることができるそうで、ホテルのロビーに飾る大きな鏡のフレームに金箔を張ってほしいなど、さまざまな依頼が舞い込んでいるとか。いまでは箔の技術を持つ職人は少ないため、大変希少価値が高い技となった。
中嶋さんの手にかかれば、存在感のなかったものが、突然自己主張をはじめる。それが表面的なものでないと感じられるのは、金箔を重ねることで、その物の本質を引き出しているからかもしれない。

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